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【新・関西笑談】最高のウイスキーを求めて(5)(産経新聞)

 □サントリーチーフブレンダー 輿水精一さん 

 ■地味な作業だが、妥協は許されない 今後は「日本の味」を世界に広めたい。

 --ブレンダーになって初めての商品が平成10年発売の「膳(ぜん)」でした

 輿水 昭和の終わりごろから、焼酎におされてウイスキーの消費量が減り続けていました。そこで起死回生として和食に合うウイスキーを売り出そうという企画が生まれました。「和」を出すにはどうしようか思案の末、スギの樽で熟成させた原酒を使うことを思いつきました。

 --スギ樽ですか。あまり聞かないですね

 輿水 スギは香りの個性が強いので少量のブレンドで十分効果があります。むしろ、強すぎる個性による違和感をどう取り除くかに苦労しました。よりまろやかにするため、竹炭でろ過するなど工夫を重ねました。それでも、社内の会議では評価が完全に2分してしまいました。

 --といいますと

 輿水 社内では「これはサントリーのウイスキーではない」という意見が多かったです。それでも、試飲してもらったバーテンダーや焼酎好きの友人からは「すっきりしていて飲みやすい」との評価をもらいました。方向性は間違っていないと実感しましたが、スギの香りの量については最後まで悩みました。

 --結局、どのようにして味が決まったのですか

 輿水 上層部への説明会議では試作品を3つ持っていきましたが、作り直しを命じられました。そのとき、かばんにもう一つ、自分が一番自信を持っていたスギの量が最も少ない試作品を出しました。すると「これでいこう」となりました。膳は予想を上回るヒットを記録し、「ブレンダーでやっていける」という自信がつきましたね。

 --膳はぜいたくな味わいだった記憶があります。この後、発売されたのが「座」ですよね

 輿水 膳がヒットしたので、和食に合うウイスキーの上級版を出そうということになりました。チーフブレンダーに就任して初の商品でした。しかし、原酒選びがうまくいかず、いつまでたっても理想の味が出せなくて。発売日は決まっており、つい「ここまでがんばったから大丈夫だろう」との気持ちで発売に踏み切ってしまいました。

 --売り上げはいかがでしたか

 輿水 予想を下回る結果に終わりました。社内の評価も膳のヒットがあったから甘くなっていたのでしょう。どうして自分が「うまい」と思う味に最後までこだわらなかったのだろうかと後悔しました。ウイスキーづくりは地味で単調な作業の連続ですが、手を抜くと必ず品質に跳ね返ってきます。このときの経験は今の姿勢に生かされているはずです。

 --後進は育ってきていますか

 輿水 ブレンダーには教えられることと、教えられないこととがあります。しかし、みんなよく考えて仕事をしているのでそれほど心配していません。

 --今後の抱負を教えてください

 輿水 日本のウイスキーがようやく世界で評価され始めているので、海外に広める活動に力を入れていきたいです。ロシアや中国でセミナーを行いました。さらに他の国にも広げていきたいですね。また、これまでは国内市場向けの商品づくりをしてきましたが、もっと海外市場を意識していこうと考えています。=おわり

 (聞き手 藤原直樹)

                   ◇

 次回は俳優の國村隼さんです。

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